現代美術 芸術、書家、水墨画、内田百音
「世田谷ライフ NO22」
世田谷美術館企画特集
白い和紙に黒の墨、時に少しだけ色を入れて表現される彼女の作品に 込められた思いとは…
世田谷美術館 事業部長
美術評論家
勅使河原 純
この世の中には、さまざまな対立する概念がある。
思いつくまま、ちょっと挙げてみよう。
東洋―西洋、水墨―彩色、抽象―具象、書―絵画、仏―神、混沌―論理
前者から出てくるのは、墨一色であらわされる幽玄の世界であり、宇宙的全体把握に迫る「悟り」だろう。
一方後者から導き出されるのは、フレスコや油絵で克明に示されてきた文明の偉大な成果であるに違いない。
通常それらは、まず交わることのない二つの現実として、われわれの前にそそり立っている。
しかし、内田百音の「作品」では、不思議なことに矛盾なくひとつの世界を形づくる。それらは一見したところ、まだ整理がつかない状態、混沌たる未分化に見えながら、実に彼女らしい状況を生み出しているのである。
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